こんばんは。
ずっと北海道にいて、月曜に帰ってきました。
新幹線で東京から函館まで。
車窓から景色を眺めつつ過ごす四時間の道程。
初めて通る青函トンネル。
海の底を走るのは、どことなく不安で、何だか息苦しい。
いつまでも続くように思える闇。
やっとトンネルを抜けた時の、柔らかい光。
終点の駅は新函館北斗。そこからさらに車で少し。
もう新幹線を降りたのに、まだ身体が動いているような感じ。
ホテルからは大きな湖が見えた。
湖以外、何も見えなかった。
絵本で見るような美しい白馬や、森の中に佇むパン屋。
どこまでも真っ直ぐな道の、潔い真っ直ぐさに目を奪われ。
一日に数本しかない電車で函館市街に出ると、そこはめくるめく海鮮の世界。
イカウニホタテ、エビカニイクラ。
少し歩くと教会通りの坂。
珈琲と餡蜜。ロープウェイと山。
坂を下れば港が見えて、船とカモメと赤レンガ。
四日目に函館を出て、電車で札幌まで。
札幌から車で江別へ。
江別という響きからパンを連想する人はどれくらいいるのだろう。
僕がずっと使い続けている唯一の小麦粉。
その小麦粉を作ってくれているのが江別製粉。
今回の旅で、どうしても来たかった場所。
事前に連絡をして、担当の方にわざわざ時間を作ってもらい、工場見学から小麦畑見学まで。
小麦粉開発担当の方。小麦農家の方。
バトンリレーのように、作り手の思いをのせた小麦が手から手へ渡り、北海道江別市から、東京都杉並区へ。
僕の焼くパン、そのパンのルーツを探る旅。
江別を出て、再び札幌へ。
もう一つ、どうしても行きたかった場所へ。
北海道に来たら必ず寄る店。
最高のマリナーラ、マルゲリータが食べられる店。
初めて来たのはまだ自分の店を持つ前で、マルゲリータを食べた時のあの感動は今でも思い出せる。
東京で僕が一番好きなラーメン屋さんと、どことなく似ているそのピザ屋さんは、僕の心を鷲掴みにし、当時の何者でもなかった僕に、これからどう進むべきかを背中越しに示してくれた。
中華そばしか作らない店と、マルゲリータ(マリナーラ)しか作らない店。
自分の全てを賭けること。
たった一つでいい、余計なものはなくていい、他の何ものでもない、自分だけの何かを作り出すこと。
二つのお店から教わった。
おかげさまで今の僕の店がある。
そのピザ屋さんに今回も行くことができた。
そして、運良く店主さんとお話しすることができた。
自分が如何にこのピザが好きか、この店が好きか、前のめりにお伝えした。
うまく伝わらなかったかもしれないけど、本当に嬉しかった。
東京に帰ってきて久々に焼いたパンは、いつもと変わらないように見える。
だけど、少なくとも僕の中では何かが変わっている。
一握りの小麦粉、その背景にあるもの、その先にあるもの。
そういうもののことを考えながらパンを作る。
トンネルは長い。
でもその先に光はある。
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